尿素製剤の作用について

くすり

尿素配合の塗り薬の効能効果を見ると、効能効果に老人性乾皮症、アトピー皮膚、進行性指掌角皮症(主婦湿疹の乾燥型)、足蹠部皸裂性皮膚炎、掌蹠角化症、毛孔性苔癬、魚鱗癬

と記載がある。(パスタロン添付文書より)

老人性乾皮症とは、加齢に伴い皮脂や汗の分泌が減少し、皮膚の角層の水分保持機能が低下することにより、皮膚が乾燥した状態のことです。鱗屑とかゆみがある。

アトピー性皮膚炎とは、もともとアレルギーを起こしやすい体質の人や、皮膚のバリア機能が弱い人に多く見られる皮膚の炎症を伴う病気です。 主な症状は「湿疹」と「かゆみ」である。

進行性指掌角皮症(主婦湿疹の乾燥型)、 いわゆる手あれは、特に主婦、美容師、飲食店員、銀行員などによくみられる病気です。

足蹠部皸裂性皮膚炎、いわゆるあかぎれで、原因は不明なようです。足のかかとが硬くなり厚くなって、ヒビも入ります。冬の病気です。

掌蹠角化症は、先天性あるいは後天性に掌蹠に過角化をきたす疾患の総称です。

毛孔性苔癬(角化症)は、通常剥がれ落ちていく角質が剥がれ落ちずにそのまま毛穴まわりの皮膚に残り、赤いプツプツした見た目と、触るとザラザラした感触が特徴的な疾病です。 皮膚が乾燥しやすい人や敏感肌の人に発症しやすく、二の腕や太もも、背中などが症状が出やすい部位です。

魚鱗癬は、 魚の鱗のように皮膚の表面が硬くなり、剥がれ落ちる病気です。

これらの病気に尿素が効果があるということです。

尿素の大まかな作用は、

尿素の働きとしては、皮膚の水分の蒸発、吸収、保持する作用をつかさどるNMF(天然保湿因子)の1つで、水に馴染みやすい性質を持つため、肌の水分を保ち乾燥を防ぎます。

尿素は本来が生体成分(皮膚組織)で、毒性などの心配が少ないので、肌に安心して使用できます。(二プロサイト https://www.nipro.co.jp/sukoyakanet/43/    )

※NMF「天然保湿因子」は角質細胞内にあり、水分を含み潤いを保持する役割を担っています。、アミノ酸を代表とする「水となじみやすい性質を持つ物質」のことです。

(KAOサイト https://www.kao.com/jp/binkanhada/skin_01_03/   )

成分としては、アミノ酸類、ピロリドンカルボン酸(およびその塩)、尿素、ミネラル塩類、有機酸(およびその塩)などの低分子である。アミノ酸およびその誘導体が大半を占める。冬季の乾燥肌、老人性乾皮症、アトピー性乾皮症などにおいて角層中のアミノ酸含量が低下し、角層水分量が低下することが報告されている。(日本化粧品技術者会サイトhttps://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/1126   )

どうして、肌が乾燥するのかですが、冬季など体温調整のため皮膚への血流が低下することで、潤いの原料になる栄養素が低下する。そして角質層から水分が飛んでいき肌が乾燥する。そして、角質層の表面がめくれ上がる。角質細胞が水分を失ってさらにかさつくということのようです。(ニプロサイトより)

少し詳しく作用をみてみると、

尿素の作用は、3つあります。

保水効果

尿素が肌の潤いを保つのは「水素結合」の力と関係しています。水分と尿素は水素結合を介してくっつき合い、混じり合うことができます。尿素は、水と非常になじみが良く、水素結合によって水分保持作用を持つ。酸素や窒素にくっついた水素はプラスの電気を帯びている。反対に酸素原子は マイナスの電気を帯びているので、この2つは互いに引き合うことになる。これが水素結合である。尿素は6ヵ所の水素結合サイト、水の分子は4ヵ所の水素結 合サイトを持っており、両者は水素結合を介してくっつきあい、混じり合うことが出来る。このため、皮膚に尿素クリームを塗布することにより、尿素がしっか りと水分子をとらえ、皮膚の乾燥を防ぐとされている。

※水素結合とは、電気陰性度が非常に大きいF、O、N等に、電子をひきつけやすい原子と共有結合した水素原子は電子を引っ張られて弱い正電荷を帯び、隣接原子の持つ負電荷との間に共有結合の10分の1程度の弱い結合を生じる。これを水素結合と呼ぶ。水分子の場合、酸素原子のもつ6つの価電子のうち、2つの電子が2つのOH結合に関与して、残りの4つが2組の非共有電子対となり、隣接する水分子と合計で4つの水素結合を作ることができる。(スプリング8サイト  http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/research_highlights/no_54/     )

タンパク変性効果

また、角質を作るタンパク質の分子はCO-NH(ペプチド結合)という構造をたくさん持っており、互いに水素結合することでくっつきあっています。ここに尿素を加えるとタンパク同士の水素結合の間に割り込んでその構造を破壊し、溶かしてしまうわけです。その結果、皮膚の角質を除去する働きがあるとされている。このように、尿素にはタンパク質変性作用がある。

浸透圧性刺激作用

保湿効果が高いとされている尿素だが、一方で刺激性があるという問題点もある。尿素は一次刺激性物質ではないため、刺激性の皮膚炎は起こさない。その刺激性は浸透圧が高いために起こってくると考えられているようです。

(非接触皮膚科学サイト http://hisesshoku-derm.com/archives/2006/10/nyouso.php  )

浸透圧と痛み

浸透圧とは、半透膜を通して濃度の低い溶液から濃度の高い溶液に溶媒が移動するように働く圧力のことを指す。 溶液が持つ、溶媒を引き込む力とも言える。鼻うがいをした時も、水道水だと痛いが、生理食塩水だと痛みがましです。これは、水は浸透圧が0にちかく、 鼻粘膜の細胞内の溶液の濃度が高いため、外側の水分子が細胞内へ移動して細胞が膨張し、ひどいときは破裂するようです。その時に痛みを伴うようです。( 生理学研究所http://www.nips.ac.jp/nips_research/2018/02/trpa1_4.html   )

これが、尿素の副作用に関連するようです。尿素製剤(尿素10%含有)で、副作用が報告されたのが、(5.4%)で、主な副作用は刺激感 (しみる、疼痛、灼熱感)4.6%だったということです。(パスタロン10%添付文書より)

上記の痛みが起こるには、細胞内の浸透圧が高くならなければなりません。

尿素の浸透の方法

細胞の浸透圧が高くなるには、尿素が細胞の内に浸透しなくてはなりません。

尿素の細胞内に浸透する方法は、

細胞膜通過は2つあり、能動輸送と、受動輸送です。能動輸送は、濃度に逆らって、エネルギーを使ってポンプのように輸送する。受動輸送は、3つのタイプがあり、1つ目が、濃度の勾配で、物理的に拡散していく輸送、2つ目は、チャネルといわれるタンパク質でできた、通路を通って輸送するもの、3つ目は、酵素の様な働きをするタンパク質の担体で輸送されるもの、があり、尿素は、拡散によって輸送されるようです。そして、半透膜のような細胞膜を浸透しますので、分子の大きさと、親水性や疎水性が浸透に影響し、尿素は、親脂性とまでいかないが、糖類のように親水性でもないということです。

(日本植物生理学会  https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2588   )

人間の細胞ではないが、植物細胞でも、尿素溶液に浸すと、原形質の体積は一旦小さくなるが、時間が経つと元の大きさに戻るということがわかっている。この、元の大きさに戻ることが痛みに関連しているということでしょうか。

浸透圧刺激性副作用過程

尿素は、細胞内では浸透圧物質ではあるが、電離しないので水溶液にした場合は、浸透圧は高い物質ではない。

細胞への浸透性は、糖類よりも脂溶性が高く細胞の中に、尿素が濃度の高い方から、低い方へ浸透していく、そうすることで、細胞内が高浸透圧になる。そして、水分を引っ張り細胞が膨張し、ひどい時には破裂する。そして、それが痛みとなる。

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尿素製剤尿素製剤

•<参考>

•薬剤師国家試験対策参考書(改訂第9版)物理、化学 薬学ゼミナール著より

•パスタロン10%添付文書

•二プロサイト

•KAOサイト

•日本化粧品技術者会サイト

•スプリング8サイト

•非接触皮膚科学サイト

•日本植物生理学会サイト

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